パートナーのDark Triad傾向は自分の攻撃性を高めるのか?

Webster, G. D., Gesselman, A. N., Crysel, L. C., Brunell, A. B., Jonason, P. K., Hadden, B. W., & Smith, C. V. (2016). An actor-partner interdependence model of the Dark Triad and aggression in couples: Relationship duration moderates the link between psychopathy and argumentativeness. Personality and Individual Differences, 101, 196-207.

Dark Triadは攻撃性と関連することが示されている。
これまで示されているのは,Dark Triad(特にサイコパシー)が高いやつは攻撃をする,という個人にフォーカスしたもの。
※Dark Triadとは,社会的に望ましくないパーソナリティ(ナルシシズム,マキャベリアニズム,サイコパシー)の三つ組み概念で,他者操作性や冷淡さが中心的特徴だと考えられている。
でも,よく考えてみると,攻撃は対人関係間のことだし,特にカップル関係とかだとちょっと違った視点からのアプローチができそうじゃない?

その視点とは,
Dark Triadの高いやつ→そいつの攻撃が高い
に加えて,
Dark Triadの高いやつ→パートナーの攻撃が高い(もしくは低い)
ということがあったら面白そう。
これを明らかにするための統計的パラダイムで,行為者-パートナー相互依存モデル(actor-partner interdependence model: APIM)というのがある。
これは,ペアデータを分析する際に使われるSEMの一種で,同一参加者同士の説明変数→目的変数のパスに加えて,参加者とペアの説明変数→目的変数のパスも推定するモデルである。
具体的には,たとえばカップルデータでDark Triad→攻撃の関連を検討する場合,
男性のDark Triad→男性の攻撃
女性のDark Triad→女性の攻撃
(行為者効果)に加えて,
男性のDark Triad→女性の攻撃
女性のDark Triad→男性の攻撃
のパス(パートナー効果)も推定する。

で,今回紹介する論文ではまさにそれを検討したもの。
主要な結果は,
1)サイコパシー→攻撃の行為者効果(男女とも)
2)男性のサイコパシー→女性の攻撃というパートナー効果
3)交際期間が上記2つの関連を調整する:交際期間が長いほど,女性のサイコパシー→女性の攻撃という関連が弱まり,男性のサイコパシー→女性の攻撃という関連が強まる。

ただし,この研究では,なぜそうなったかっていう裏づけが微妙にないのだ笑
文章内で口すっぱく言及してるのは,”Dark Triadと攻撃の関係でAPIMを使ったはじめての研究だから,探索的でもいいのだ!”みたいな話なんだけど,少なくともなんか考えろよなー笑
しかも実は,女性のナルシ→男性の攻撃に負の関連,っていうわけのわからない結果も出ていて,それについての言及もペンディングしている笑その理由は,探索的だから,だって笑いいのかよそんなんで笑
※先行研究と行為者効果では,ナルシ→攻撃の正の関連が示されている。

ちなみに,この研究での攻撃は主に言語的な攻撃で,APIMを使うのがどの程度適切かどうかよくわからん。
デートバイオレンス項目でもないし。
絶対これAPIM使いたかっただけだろー。