Monthly Archives: 2月 2016

パートナーへの暴力は男性が女性に対して行うものなのか?

Straus, M. A. (2008). Dominance and symmetry in partner violence by male and female university students in 32 nations. Children and Youth Services Review, 30(3), 252-275. doi: 10.1016/j.childyouth.2007.10.004

この論文で分かったことは大きく分けて次の2つ。
・パートナーへの暴力は,お互いに行うというパタンが多く,次に女性が男性に行うパタンが多い。
・IPVのリスクファクターとして男女とも支配性が高い。

社会問題としてDVがある。ただし,DVは,例外はあるが,婚姻関係にあることが前提となっている。
しかし,婚姻関係にない恋人同士においても同様の暴力が発生することがある。
そのため,婚姻関係の有無にかかわらず,このような暴力を“親密なパートナーに対する暴力(Intimate partner violence: IPV)”として包括的に研究がなされている。

IPVは,直感的には男性が女性に対して行うと考えられやすい。
事実,日本のIPVに関する行政の措置や論文は,男性が女性に対して行うものという前提で話が進められている。

でも,実はそんなことはないのだ。
ということを,32の地域からサンプルを収集し(その数13,601人!),分析したのがこの研究だ。
全サンプルの内,4239人はパートナーとの暴力があったと報告しており,このサンプルについて詳細な分析がなされた。

結果,IPVで最も多い形態は,双方向,つまり,お互いにIPVをするパタンだったことが分かった。これはIPV発生カップルのうちの大体7割を占める。
IPVの中でも重大な暴力(蹴る,殴る,銃やナイフを向ける)なども双方向パタンが全体の6割を占めた。
かつ,直感に反して,双方向の次に多いパタンは女性から男性への暴力で,特に重大な暴力では3割弱を占めている。

IPVのリスクファクターとして支配性が挙げられる。
ここでは支配性を質問によって測定しており,具体的な項目は,“パートナーは私が管理しているという事を自覚している必要がある”など。
支配性に加え,年齢,交際期間,経済力などから,IPVをする/しないを予測できるかどうかの分析を行ったところ,支配性の予測力が他の変数に比べてもとても強いことが分かった。
具体的には,支配性得点が1高まると,IPVリスクは2倍弱から5倍以上になる。他の変数はほぼ予測力がない(※ただし論文に記載されている信頼区間と整合していないので,私の読み間違えか論文の間違いがあるかも)。
特に,支配性は男女どちらでも重要なリスクファクターであるという点が興味深い。

直感に反する結果は示されているのだが,これが世間一般にどのように広まるか,とか,行政はどのように受け止めて対応するのか,など課題は尽きませんねー。
最近,ニュースでも男性のIPV被害のトピックがありましたが,それだけで物珍しいような記事になることそのものが云々

ダイエットはあなたをスーパーモデルにさせるのか?

Tovée, M. J., Mason, S. M., Emery, J. L., McCluskey, S. E., & Cohen-Tovée, E. M. (1997). Supermodels: Stick insects or hourglasses? Lancet, 350, 1474-1475. doi:10.1016/S0140-6736(05)64238-9

スーパーモデルになるために食事制限をして細くなればいいのか?
これを検証したのがTovéeのグループ。
って言ってもスーパーモデル云々は枕詞みたいなもの。
魅力的な女性はどのような体型をしているのか,というのがリサーチクエスチョン。

300人ずつのファッションモデル,グラマーモデル,一般女性に加え,拒食症患者30人の身長,BMI,ウエスト,ヒップ,バストのデータを収集した。
結果,1)ファッションモデルは他よりも背が高いこと,2)ファッションモデルとグラマーモデルはよりくびれのある体型(砂時計体型)なことがわかった。
特に,背の高い砂時計型はより曲線的に見えて,この曲線が女性の身体的魅力に重要な要素なのだ。
つまり,細くなることが必要条件なのではないのですねー。

この論文のオチは,食事制限はあなたをVogueのカバーガールにはしませんよ,だそうです笑

ヤなやつのナンパパフォーマンスは曇りの日にアップするか?

ブログを開設した。
論文とかその日のこととか書いていこうと思います。
続けられればいいなー。

Rauthmann, J. F., Kappes, M., & Lanzinger, J. (2014). Shrouded in the Veil of Darkness: Machiavellians but not narcissists and psychopaths profit from darker weather in courtship. Personality and Individual Differences, 67, 57-63. doi:10.1016/j.paid.2014.01.020

ダークなパーソナリティがある。ナルシシズム(尊大な自己感),サイコパシー(冷淡さ,衝動性),マキャベリアニズム(他人を操作的に扱う,自分に都合のいい行動をとる)をまとめてDark Triadという。

今回の研究は,Dark Triadは太陽の光が届かない時にナンパパフォーマンスがいいのではないか?ということを検証した研究じゃ。
まず,参加者男性はDark Triad尺度に回答し,ビデオクリップに撮られた。
その1~3週間後に女性をナンパし,その時の女性の笑顔と男性に対する評価(これはナンパ後にアシスタントがその女性にインタビューした。ちなみにこのアシスタントはナンパ中の参加者男性の評価もしている)を測定した。
また,その時に天気も記録した。

→結果,Dark Triadのうち,マキャベリアニズム傾向が天気・ナンパパフォーマンスと関連した。
どうなったかというと,晴れの日にはマキャベリアニズム傾向が高いほどパフォーマンスは落ちる(評価が悪い)が,曇りの日には,マキャベリアニズム傾向が高いほどパフォーマンスが上がるのだ笑

Dark Triadはズルや他者の欺きが特徴的なパーソナリティで,これがばれないような暗い時(曇り)にパフォーマンスがいいのでは,という考察。ただし,暗い→いい評価ではなく,暗い→自信が高まる→いい評価という間接的な効果を指摘。

まあぶっちゃけ考察に関しては(このままの文章だと)取ってつけた感あるし,ちゃんと説明すると冗長になるのでやめますが,
この研究の何がすごいって,データの測定。

これ,男性参加者は“求愛プロジェクト”という名目で募集された。18歳以上独身異性愛者男性59名。
そしてこの人たちに,“5時間以内に25人の女性にアプローチできたら25ユーロだぜ!!”と教示し,フィールド調査スタート。
そしてナンパされた女性はなんと1359人!!笑
やりすぎだろーこれ笑いいなー。つーかこんな教示しといてよく「自然な状態での研究です!」とか言えんな笑

これは方法が,えーいやったれー感があって面白かったのでめでたく初ネタに笑
世の中は広い笑